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部屋に帰って机に向かっても、勉強を再開することはできなかった。あの氷の食べっぷりにインパクトがありすぎたせいだ。問題に取りかかろうとしても、あの鬼気迫るような食べ方ばっかり思い出してしまって、全然集中できない。
なんなんだ、あの人…。
勉強を諦め、スマホで検索画面を開く。“氷をものすごく食べる”と、入力してみた。何かありそうだとは思わなかったし、詳しく知りたかったわけでもない。けど、動画でもなんでもいいから別のものを観て、さっきの衝撃的な記憶を置き換えてしまいたい。
あんなに食べるか、普通?
そう思ったことに応えるように、画面には聞き覚えのないその病気に関するリンクがずらりと並んだ。
「…なにこれ」
氷食症、という病気があるらしい。とにかく、やたらと氷を食べてしまうのだと。
鉄分不足が原因とか、逆に氷の大量摂取で鉄分が欠乏するとか、その辺はまだ解明されていないらしい。他人が触ったものを拭かずに触れないとか、しつこく手を洗ってしまうとかって強迫症状を伴うせいで、精神疾患の一種と考えられているとも書かれていた。
「病気…なんだ…」
確かに、病んでるのかってくらい白かったしな。
ネットで調べて得た浅い知識で判断するわけではないけど、なんか面倒臭い性格の人かもしれない、と俺は考えた。いや、面倒臭いっていうか、ちょっと怖い。最初は大人しそうに見えたのに、氷の食べ方だけ尋常じゃなくて。対象が氷じゃなかったらホラーな部類だったからな。必要最低限以上関わらないのが無難だ。そうしよう、と結論付けて俺は検索結果を閉じた。
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