ケーブルテレビ局終了のお知らせ

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 僕の住んでいる町は、交通の便が悪い。まず鉄道の駅がない。隣の市にある駅は、昼間は1時間に電車が2本だ。  町営の巡回バスが、最寄りのバス停まで走ってくる。朝は1時間に3本だ。  都会の方からすれば、多分、田舎だろう。    晴れの授賞式、当日になった。日曜日なので、ご近所の町役場勤めの方が、カメラマンをしてくれた。  問題なのは、受賞者さまがどなたも参加されないのだ。赤丸(あかまる)ケーブルテレビでは、授賞式を生中継する。  また、再放送もする予定だ。喫茶店の裏側で、頭を抱えている僕に同人作家の須川 《すがわ》 大平(たいへい)君が肩に手をのせてくれた。 「大丈夫。何とかなる」  授賞式が始まった。飾り付けられたお洒落な、喫茶店では、来賓(らいひん)の町長さんがスタンドマイクの前で、挨拶(あいさつ)をしている。  商店街(しょうてんがい)振興組合(しんこうくみあい)の幹事じゃなかった、えーと、町会議長も挨拶(あいさつ)だ。  緊張しすぎて、何を言ってるのか分からないし、逃げ出したい。  挨拶(あいさつ)の最後は、主催者の僕だ。紙を取り出して、震える声で定型文を読み上げた。重い足取りで、力なく、パイプ椅子に腰を下ろした。  審査員の須川 《すがわ》 大平(たいへい)君の受賞作発表が終わった。僕は目の前が真っ暗になる。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加