プロローグ

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 人が行方不明になるという話は、昔からよくあったんです。  1892年。  フランスの物理学者。モンターギュ大学の教授だったマルベーユ・コロンは、生涯に残した数少ない著作の一冊である『異世界実存論』の中で、数々の事例を基に、  「空間に存在する全く別の世界に迷い込み、行方不明となった」 可能性について言及しました。   その世界というのは、普段は目に見えない壁に覆われて、わたしたちが立ち入ることはできないのですが、なんらかの理由で異世界との境目の扉が開くことがある。  行方不明となった人々は、偶然、その扉から異世界に入り込んでしまった。その後で、再び扉が閉まったため、戻ることもできずに異世界を彷徨っているというのです。  コロンが唱えた異世界に高木さんも迷い込んでしまったのでしょうか?  ハッキリしていることは、高木彩香さんが学校帰りに姿を消し、日下部君が十六歳の誕生日を迎えた今日も、いまだ行方不明ということなのです
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