プロローグ

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プロローグ

 パトカーのサイレンを聞くことは、いまどき珍しくもありませんね。  川辺の道。中学のブレザーを着た少年少女が仲良く手をつないで歩いていくそば・・・ 一台のパトカーがけたたましいサイレンと一緒に通り過ぎていくのです。  警官が三人。道端で顔を突き合わせています。  「誤って川に落ちて下流に流されたとか・・・」  「川に遊びに行く予定はなかったと家族も・・・」  ふたりは、横目で警官を見ながら通り過ぎます。  手提げ袋には、「一年一組 高木彩香(たかぎさやか)」《一年一組 日下部祐基(くさかべゆうき)》とマジックで名前が書いてありました。  高木さんは目がパッチリしてショートカット。パッと目を引く長身。白のクルーソックスを履いた長い脚で、かろやかに地面を蹴ります。  手をつないでる日下部君はといえば、小柄でやさしそうな表情。高木さんに引っ張られるみたいに歩いています。  「行方不明だって・・・イヤだね」  大声が響きます。  「うん・・・」  しかられたみたいに小さな声が返事します。  「うち、お母さんしかいないし遅くまで働いてるからさ。 もしわたしが行方不明になったってすぐ分からないんだよね」  「やめてよ。そんな話」  いまにも泣きそうな声です。  「ユウちゃんのとこだってさ。お父さんだけだし、ほとんど家に帰らないんだよね。 家政婦さんにまかせっきりで・・・なにかあったら大変だね」  「そうだよね」  「でもわたしたち、小さいときからいつも一緒なんだもん。なにかあれば気がつくよね」  「うん。でもそんなことぜったいイヤだよ」
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