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あの子が居なくなった時、私は内心ホッとした。だって、ウザかったんだもん。本当は友達とすら思っていなかった。だけど、周りの人達がうるさいから、仕方なく友達をやっていた。あの子、田中女神は、私にあてがわれた友達だった。
小学校入学の時、私が住んでいる団地に同級生が居る事が分かった。親同士は意気投合し、私達に手を繋がせ、「良かったね、友達が出来て」と笑った。冗談じゃない、友達なんて自分で作るものでしょ?と思ったけど、怒られるのが嫌で言うのを止めた。
「小南麻衣子ちゃん、これからよろしくね」女神はそう言って繋いだ手を強く握った。
「女神ちゃんは礼儀正しい良い子ね。あんたも見習いなさい!」お母さんはそう言って、私の頭を軽くコツンと殴った。
渋々あいさつをすると、その日から私達は友達になった。…形だけだけど。
女神は私に対して我が儘な子だった。2人で居る時は、常に威張っていた。その日は公園で遊んでいた。
「お姫様ごっこしようよ!私がお姫様、麻衣子が家来ね!」
「私もお姫様やりたいんだけど」
「私がお姫様!麻衣子は家来!」
「じゃあ、交代でお姫様と家来をやろうよ」
「私に家来をやらせるの?!うぇーん!」
女神は大袈裟に泣き出した。大粒の涙を流して、麻衣子ちゃんがいじめるー!と叫んでいた。こいつ、面倒くせ。
女神の泣き声にビックリして、ベンチで雑談していた私達のお母さんが駆け寄ってきた。
「麻衣子!あんた何女神ちゃんを泣かしてるの!」
「違うよ!女神が勝手に泣き出したんだよ!」
「おばちゃん、麻衣子ちゃんが私に嫌な役を押し付けるー。威張りたいから麻衣子ちゃんはお姫様をやって、私は家来なんだって」
「誰が威張りたいなんて言った?!それはあんたじゃん!」
「今度は怒鳴るー!うぇーん!」
大泣きする女神に、おばちゃんはハンカチを差し出し背中をさする。
「麻衣子ちゃん、女神は他に友達が居ないの。仲良くしてあげて」
おばちゃんは困った顔をして、私を見詰める。
「麻衣子、仲良くしなさい」
お母さんまで女神の味方で、私は腹がたった。でも、私が怒っても大人にはかなわない。
「…はい」
私は渋々返事をした。
そんな私を、女神は勝ち誇った顔で見ていた。ムカつく。
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