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女神は他の人には普通に接してたが、頭が悪くて運動が出来ない肥満児だった為、結局同級生にも嫌われていた。
うちのクラスでは、『海の子山の子便所の子』という遊びが流行っていた。名前の文字数だけ、その言葉を言うのだ。例えば私、小南麻衣子なら、『こみなみまいこ』なので7回それを言うと、『海の子』で止まり、私は海の子になるのだ。女神は今日、それでからかわれていた。
「便所の子ー!田中女神は便所の子ー!くっせー汚ねぇ便所の子ー!」
クラスの男子が、女神をそう言ってからかう。
「止めてよ!私、臭くないもん!」
「知らねーの?デブってくせーんだよ?」
「私はバラの匂いだもん!」
「汗臭いデブが、何言ってるんだ?」
その言葉に、女神は泣き出した。そして男子に殴りかかったが、運動音痴な彼女、ヒラリとかわされて拳は宙を切った。
「殴れると思ってるの?バーカ」
男子はそう言うと、殴りたいなら追い付いてみろよと駆け出した。ムギー!と悔しそうな彼女は、コラー!と後を追っていった。
そんな事があった日、家に帰るとお母さんが玄関で仁王立ちしていて私を待っていた。
「麻衣子!あんたって子は、女神ちゃんを助けなきゃダメでしょ!」
お母さんは私を見るなり、そう怒鳴り付けた。
「今日、女神ちゃんがいじめにあったんでしょ?いじめを見て見ふりする子に育てた覚えはないわよ」
お母さんはそう言うと、私の頭を軽く小突いて踵を返した。
どうして私ばっかり怒られるの?
私は女神に対して、少しずつ降り積もる憎悪を止められなかった。
しかし、友達を止める事も出来なかった。
女神は私にべったりで、人前では優しかったから、同級生は私達の事を親友だと思っていた事だろう。何度も離れようとした。だが、その度にお母さんに止められた。
「どうして女神ちゃんに冷たくするの!友達でしょ!」
「女神ちゃんが困っていたら助けてあげなさい!友達でしょ!」
1度、別の友達と遊んでいたら、女神ちゃんも入れてあげなさい!と怒鳴られた事もある。女神を入れたら場の空気が悪くなるから外したのに。
おばちゃんは、
「うちの女神はまさに女神!美人でスタイルが良くて思いやりがある!」
「女神は大器晩成型!そのうち勉強もスポーツも出来るようになるわ!」
「女神は麻衣子ちゃんしかまともな友達が居ないの。だから、よろしくね」
と、口を開けばそればかり言っていた。
居なくなってほしかった。女神も、おばちゃんも。
私の世界にあんたらはいらない。
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