仮面交友記録

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女神は周りの大人にチヤホヤされて、益々態度がでかくなっていった。 例えば私の部屋に来た時には、毎回何かしら持って帰っていった。 「麻衣子ちゃん、このノート可愛いね。使ってないならちょうだい!」 「ダメ。それ算数のノートの予備だから」 「良いじゃん!ノートくらいまた買いなよ」 「その柄もう、文房具店にないの」 「じゃあ、なおさらちょうだいよ!気に入ったんだから」 私達は小2になっていたが、女神は相変わらずだった。 「良いの?あんたのお母さんに言うよ?怒られるの嫌でしょ?」 「分かった。あげるよそれ」 私は唇を噛んだ。 「最初から素直にそう言えばいいのよ」 その言葉にカッとなって、思わず壁を殴った。驚いた女神は、今日はもう帰ってあげるわと、そそくさと帰っていった。 本当、ムカつく! その後も女神は、一見友達として私に絡んできた。私の家で成績が悪い女神に勉強を教えている時、大人が目を離した隙に、あんたの教え方が悪いから私の成績が悪いのよ!ちゃんと教えてよ!と耳元で囁かれたり、趣味の悪いキーホルダーをプレゼントされて、私とお揃いよ。友情の証なんだからちゃんとランドセルに付けてよ!と言われて、1週間後に外したら大泣きされたり…。1週間付き合ってやっただけ感謝してほしいのに、何て冷たい子!とお母さんに怒られたのは納得出来ない。学年が変わる度に、こいつとクラスが離れます様にと願った。何かグループを作る時も、絶対にこいつと組まされた。もう、うんざりだった。 「麻衣子ちゃん、私達小1の時から今までずっとクラスも離れず一緒って凄くない?これからもずっと親友でいようね」 うるせぇ、お前にとって私は親友じゃなくて奴隷か何かだろうが!私はそう言おうとして口をつぐんだ。 私達が小6になった時、私に好きな人が出来た。男子を見てドキドキしたのは、これが初めてだった。相手はサッカークラブに入っている、同じクラスの男子だった。優しくて誰にでも分け隔てなく接する子で、成績も優秀だから、ライバルは多かった。 女神は相変わらず、体型と成績の悪さで、何となくクラスから浮いていて、今日も男子からからかいを受けていた。 「王様ー姫ーブターコジキ♪王様ー姫ー…お前は便所の子で姫だから便所姫だ!やーい便所姫!」 「高槁君、止めてよ!」 どうやら今、一部の男子の中で、海の子山の子便所の子の別のバージョンが流行っているらしく、それでやると女神は姫らしい。ため息を付いて助けに入ろうと席を立つと、私より先に助けに入った子がいた。好きな人だった。 「高槁、いじめは止めろ。格好悪いぞ」 「何だよ森野、だってこいつ便所姫じゃん」 「山田が便所姫なら俺も便所姫だよ。だって俺、森野つばさで6文字だし。しょうもない遊びで人いじめるのは止めろよ。山田、気にするなよ」 森野君はそう言うと、女神の頭にポンと触れた。その途端に、女神も恋に落ちたのが分かった。だって、頬が赤く染まってる。 面倒くさい事になるなと、私はげっそりした。
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