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「麻衣子、私、好きな人が出来た。協力して」
ほら、やっぱりと思った。相手は絶対森野君だろう。これは譲れない。
「森野君でしょ?」
私の言葉に女神は頷いた。どうして分かったの?と言う女神に、だって分かりやすいからと答えると、女神はフッと笑った。
「さすが付き合いが長い私の親友!で、協力してくれるんでしょ?」
「嫌だよ。自分で頑張りなよ」
私は冷たく言い放った。何故親友でもない女の恋に協力しなきゃならないのか、何故私も好きな男子をこんな奴に譲らなきゃならないのか。沢山の物をこいつに盗られてきたけど、今回は譲れない。
窓の外を見ると、森野君はグラウンドで必死にサッカーボールを追っていた。サッカークラブが練習している様を、私達は教室で観覧している。
「酷い!どうして協力してくれないの!親友でしょ!」
女神は私を睨み付けた。ああもう。私は深く息を吐いてこう言った。
「私も、森野君が好きなのよ。だから譲れない」
言いながら女神の目を真っ直ぐ見詰めた。
しかし、女神はプッと吹き出した後に、ハハハハハハと笑い出した。
「あんた、私に勝てると思ってるの?私の方が良い女なんだから、負けを認めて私に譲りなさいよ」
男子と張り合って給食を食いまくるデブが、何を言ってるんだと思った。
「私は諦めないよ」
私はもう一度女神の目を見詰めた。
外から歓声が聞こえる。森野君がシュートを決めたらしく、森野!森野!とコールが響く。窓から外を見ると、森野君が仲間と喜びのハグをしていた。
「もう、大嫌い!あんたのお母さんに言いつけてやるわ!」
出会った時から幾度となく言われていた台詞を、こいつは何度言えば気がすむんだろう。怒られるのが嫌で、ずっとこいつのご機嫌をとっていた。けど、もう止める。
「言えば?私もう、その台詞に怯えるのを止めるわ」
私の一言に、女神は驚いた顔をして、そして黙って教室を出ていった。
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