3人が本棚に入れています
本棚に追加
私は幸せだった。クラスの女子と毎日遊び、テスト前には一緒に勉強した。ある日、小南さんってうちらとの方が相性合ってるのに、何で便所姫とずっと一緒に居たの?と聞かれて、本当の事を話したら同情された。辛かったねと言われたとたんに、涙が出てきた。うちらは小南さんの味方だよ!これからずっと友達だよ!と言われた時、ああ私もう、女神と友達やらなくて良いんだと安堵した。
一方、孤立した女神は毎日誰かしらからいじめを受けていた。森野君は別のクラスの女子にも人気があった為、隣のクラスの女子数人が乗り込んできて、女神に罵声を浴びせて帰っていく事もあった。どんないじめを受けても、女神はけして泣かなかった。教科書に落書きされても、体操服を切り刻まれても、女神は悲しそうな顔をして耐えていた。私はよく、体育のドッジボールの時に女神をいじめていた。運動音痴だから、顔面に当て放題だった。何せ顔面はセーフ。何度顔にボールが当たっても、外野に出れないイライラは耐え難いものだろう。ざまあみろ、女神。周りはその様子を見て、クスクス笑っていた。
麻衣子、遊ぼうよ。と、リカちゃん人形片手に私の家に女神が来たのは、小学校卒業間近の時だった。私、また麻衣子と遊びたいと言う女神の願いを却下した。もう中学に上がる時期だというのに何故リカちゃん。もうそんな遊びしねーよ。
「麻衣子、私と友達をやり直してよ。私別に怒ってないから」
「無理。私もうあんたと関わらないって決めた。あんたと居ると疲れるのよ。威張るし、物を盗られるし。私は1度だってあんたを友達と思った事がない。帰って!」
私は女神をドンと押して玄関から出し、ドアを閉めて鍵をかけた。暫くはチャイムの音が響いてたが、諦めたのかやがて静かになった。
これが女神を見た最後だった。
女神はこの後、夜の町に消えていき、行方不明になった。
最初のコメントを投稿しよう!