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肥満体型の女の子が、露出が多い服装で夜道を歩いていたという話は、翌日に大人達の話で聞いた。それが女神だと分かったのは、学校に来なかったからだ。
何やってんだと思った。私に突き放されて次にやるのが、キャミソールとホットパンツで町中徘徊って…。
「田中さんは、誘拐された可能性もあります。もしどこかで見掛けたら深入りせずに、すぐに警察に通報する事。追いかけると君達も犯人の餌食になるかもしれません」
担任の言葉にはーい!と返事をすると、担任は教室を出ていった。
この教室の中に、悲しんでる人は居なかった。心配してる人も居なかった。クラスのお荷物が消えたと、内心みんな安堵していた。
それからは卒業まで、クラスは笑みで包まれた。教室から嫌われ者が居なくなるだけで、こんなに空気が綺麗なのかと思った。女神が居なくなった事で他のクラスからの襲撃もなくなった。
お母さんは、田中家との交流がどんどんなくなっていった。最初は女神が居なくなった事を必死に慰めていたが、おばちゃんはどんどんおかしくなっていったらしい。娘が居なくなって悲しいから1週間一緒に旅行しようだの、娘が居なくなって悲しいからあんたが持ってるシャネルのカバンをくれだの…面倒になったお母さんは、あんまり相手にするのを止めたらしい。
小学校卒業と共に、田中家との関わりは完全に切れた。おばちゃんは女神の卒業証書を取りに来ていたが、誰も声をかける人は居なかった。
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