優しい手

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優しい手

アタシは江戸川区北小岩で産声をあげた。3580gの立派な?赤ちゃん!スクスクと育つであろう予想は、僅か152cmで止まった。 おまけに手も足のsizeもミニチュアときた。 今でも手袋は婦人用だとデカいのでJr用を使うし、足のsizeは21.5cmとこれまた中途半端なsize感覚。 ヒールを買う時は中敷き入れて22cmのを買うかスニーカーはJr用。 お得な時もある。 立派な?産声あげたアタシだが、母の胆石入院により産まれてすぐに祖母に育てられた。 小岩に戻ってきたアタシは、身体の弱い子で何度も扁桃腺からの高熱を出していたらしい。 小学生の高学年で扁桃腺腫らして主治医の所へ行ったら「扁桃腺だね、今度熱出したら扁桃腺切っちゃおうね」 これを聞いた母は「お母さんもね、熱出して喉ちんこ切ったのよ!凄い血が出たのよ~洗面器持ってそこへ出すの!氷をね口の中に入れて血を止めるのよ!あんたもそれやるんだね」 それからピタリと熱を出さなかった。 絶対に熱出してやらん!扁桃腺は切らん!の意思の強さで……為せば成る! そんなアタシだが、やはり高熱を出して寝ていた時である。 まだ3歳くらいだと思うのだが、アパートの…と言っても今どきのアパートと違うのが昭和の銭湯がアチコチにあった時代だ。 部屋に風呂などついていない。あるのは…ぼっとん便所。 1人でトイレに入れないアタシ(当時) なぜかトイレに行きたくて起きた……「お母ちゃん?おかぁちゃん!」呼んでも返事がない。 寝ているから少しの間なら出ても大丈夫だろうと近所へ行った母。 硝子の引き戸を開けて叫ぶが、いない。 オシッコが漏れちゃう!どうしよう?心細さと怒られるという恐怖とが入り交じり泣きだしてしまった。 そこへ隣りのお姉さんが帰ってきて「あら、どうしたの?お母さんいないの?」 「オシッコしたいのにおかぁちゃんがいない」泣きながら言うと、お姉さんはおいでと手を差し伸べ抱っこしてくれた。
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