7人が本棚に入れています
本棚に追加
満ち潮
星窪みの前で悟君は
芭蕉の葉を数枚重ねた上に
膝をついて正座すると
何か呟き初めたのです
「吉岡さんも少しの間正座してください・・」
果林さんは悟の斜め後ろに座り、たかし君はその右側に座った、
ミユルパラス フニャッ
ニヌバフシ ミアティ
バヌナセル アボヤ
バンドウ ミアティク
私を生んだ母を守るように
私達家族を守ってください
ニウルバフシ ミアティ
バンドウ ミアティク
「皆さんこれから結界に入ります・・」
「頭を下げて順番に入ってください・・」
私達は真っ暗な洞窟に足を踏み入れ数歩
進んだ所で悟君と果林さんは頭を上げた、
「ここからは懐中電灯を使っても大丈夫です
門の神様の赦しを授かりました・・」
「もう少し奥なので足下にきをつけて
進んでください・・」
すると洞窟の奥の方から
ボォァー ボォァーと不思議な音が
響いて来たのです
「吉岡さん大丈夫です、ここは海と
繋がっていているんです・・」
「え、波の音?」
「吉岡さん、潮がこれかる満ちてくるので
す・・」
ボォァー ボォァー
ヴァチ ヴァチ ヴァチ ボォァー
「凄い波だね・・」
「洞窟の湖面に映る星はこの波の音が
終わった後に映るんです・・」
満ち潮が起こす波は洞窟の内部にぶつかりながら不気味な音をたててまるで何か
怪物が近づいてくるような
奇音を星窪みに響かせている
さすがに私は身を縮めて進むのを止めた、
洞窟の奥はグァッと盛り上がり少しづつ
こちらに近づいて来た、
「暗いとなんだか生きてるみたいだな!」
暗闇はその人の心を映すと昔言われた事が
あったけど確かにそうだ、
悟君と果林さんはこの島の神様が見えているのかも
知れない
暗闇に何の映像も浮かばない私、
「たかし君、大丈夫かい・・」
「吉岡さん、さっきからたかし君は
私にしがみついています、」
「果林さんは怖くはないの 、 真っ暗なのに・・」
「私は慣れてるし、星窪みは温かく感じるわ・・」
「光った、」
たかし君は何か光を感じたようだが
私の方からは見えないのです、
「ふたりとも膝をついてください、」
悟君は何か見えているらしい
言われた通りにしゃがんで見ると
少し先に満潮で上がって来た湖面に
幾つかの光が映っているのだ!
「これは神秘的だ、」
珊瑚礁の洞窟の小さな穴から
漏れる月光が湖面に幾つか散りばめられて
星座のような形を作り出している、
最初のコメントを投稿しよう!