月夜と海辺

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月夜と海辺

 たかし君は浜へ出て天の川と満月を見上げていた、 語り掛ける様に寄せては返す綺麗な波は月明かりを含んで浜へ打ち上げられている、 海も月も星空も生きているようだ! 三人と月夜の浜辺のシルエットはお伽噺が始まるような雰囲気だ、 私はたかし君を注意しようと思ったが止める事にした、 私も三人の横に並んで星空を見上げた、 人間のものでない美しい景色はきっと神様のものなのだろう! 沖縄の霊があの世に行かずにこの世のとどまるのもわかるような気がする 海岸線から少し離れた所に真っ暗な島がみえる、 「ゲニ兄さん、あの少し離れた島が僕を呼んでいるような気がするんだけど?」 「たかし君今からあの島に行くんだ、」 「まあ! たかし君は神様がわかるのね・・・」 三人は神霊がいるかのように会話を進めている、高校生の果林さんまでも否定的ではないようだ、 「果林さんは神様はいると思っているんだね!」 「はい、この島に住んでいると否定するものは何にもないんです、今ここにいるのもあの島の神様がいるからだし、・・」 「海に浮かんで月の明かりを受けている 海月も砂浜で砂を 吹き出す有孔虫もただそこに存在している訳ではなくて ちゃんと月夜の明かり、それも満月を知っているんです、 海の中の珊瑚もちゃんとそれを感じて生きている、 人間の作り出した世界には無いものばかりです、・・・」 「吉岡さん、富富島の家には6柱の神様が祭ってあるんです、火之神、門の神、家の四隅の神、本土とは違って仏教の影に隠れた神様とは少し感覚が違うかも知れません」 「仏教が伝わるまてはそうかも知れないね ・・」 「本土から自然に憧れて移住してきた 人達を見てると梯子を外されたような生き方何ですよ、楽しくなくては行けないって考えみたいでここに来ると空回りした挙げ句 台風の力にビックリして大抵の方々が退散してしまうんです・・」 楽しくなくては行けないって言う人生観って確かに浮わついているのかも知れない、 当たり前のように肯定される楽しくなくちゃ行けない人生、昔は人生は誠実であるように 言われていたのにどこかでギヤが変わってしまったようだ、沢山の歯車が回っている都会ではおかしな歯車を修正するには大変な根気がいるようになってしまった 私の記憶ではテレビを通して蔓延してしまったがその前は確か紙芝居が原型だったような気がする、バナナの口上もそうだそう、商品を売らんが為に人々の注目を集める、この事が人生観とタッグをくんで人生の王道のように振る舞っているのは確かにおかしな現象かも知れない、この人生観の恐ろしい所は功利的に振る舞う連中に居場所を与えてしまう所だ、享楽的人生までも楽しい人生に含まれてしまうのはどうしたものだろう、少し考えてしまう、 功利的な連中が利益を追い続けて人生が取り返しのつかない事を知った時、過ぎ去った時間を取り返すように毎日、刺激を求め伸びきったゴムのような神経を更に引っ張りつづけるのだ、 伸びきったゴムパンツは誰が見てもだらしがない、利益が実在すると勘違いしている人は今でも多い、利益は組織が上手く機能している指標にしか過ぎないのだ、都会暮らしに麻痺してしまうとお金のアリガタミだけにきをとられるがお金もあるようで実在しない約束事でしかない、疑い深い功利主義者達はこの幻が消えてしまわないように国家にアンカーを掛けるのである、お金は誰もが理解しやすい幻で引き留める手段として金は重宝されている、 お金程変幻自在のものも少ない、幻であるなら何かしらの妖怪がお金にはとり憑居ていて都市の中で暗躍しているのかも知れない、人間が作り出したもので美しいと感じられるものはそれほど多くはない、始まりと終わりの辻褄が合う会計システムが美しく感じると言う人や物理の方程式が美しいと言う人がいるが万人が美しいと感じられる創造物は自然の中それも地球にしかない、 しかも珊瑚礁は格別に美しい、珊瑚と海藻が共生していてその回りに草食系の色鮮やかな魚達が藻の仲間を食べる為に群れをなしている、何処までも透明な海はこのバランスの上に成り立っているのだ、 都会の贅沢が幻を掴まされた、悔し涙だのように感じるのは僕だけだろうか、 贅を尽くしたパーティーに涙の様なイヤリングや首飾りが似合ってしまうのもその為だと私は見ている、 魚から見たら人間は投網の中で暮らす不思議な生き物に見えているかも知れないのです、 「吉岡さんは自然は克服するべきだと思いますか・・」 「あ、・・そうだなー、自然の中の一部の人類が自然を克服するべき対象にするのは可笑しな話かもね!」 吉岡は高校生の果林さんが環境と自然に対してしっかりした考えを持っているのに少し驚いた、 「自然崇拝から生まれた神々を信仰する事って 自然と共生している事になるんじゃないかと私は思っているんです・・・」 「克服すべきは傲慢になってしまった人間の方じゃないかと私は確信しています、 当たり前のように目にする海や島々を信仰をなくして守る事は出来ないんじゃないでしょうか・・」 「吉岡さん、たかし君と悟君はもうあんなに先にいってしまいました、私達もいきましょう!」 「月夜の浜辺で波打ち際を進む子供達は本当に神様の使いみたいですね!」
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