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「アメフラシが降臨されたぞ!」  轟音とも怒号ともとれる沢山の音の暴力に、要(かなめ)は痛む頭を押さえた。  誰がウミウシだよ……。  物理的な痛みは、どこからか落ちたような覚えのあるものだった。寝相の悪い要はよくベッドから落ちるから疑いもしなかった。  何だろう、この歓喜に熱狂するような人々の声は。音量を上げてテレビでもつけたまま寝てしまったのだろうか。 「アメフラシ、具合が悪いのか?」 「雨……?」 「今から儀式を行う。お前は神から使わされたアメフラシだ」 「俺はただの高校生で、儀式とか……。ていうかあんた誰だよ!」  俺を抱き上げている男の目は青く、髪は金色に輝いていた。 「我が名を欲するか。我は陽王(ひおう)。そなたの導き手であり、王、そして司祭の一人である」  頭の悪い外国の人だとしか思えなかった。他の人に説明をもらおうと首を傾けると眼下に広がる景色に目眩がした。  RPGのゲームかと思うような石造りの城だった。要がいるのはバルコニーを儀式用に改造したような場所だった。怒号のような声は、城の中庭だけでなく見渡せる部分全ての人間があげる歓喜の声だと気付いた。 「これは夢か……?」 「メリルラシュ国だ、アメフラシ。そなたは、神が我が国に遣わした神の子だ」  要は、呆れたように笑った。神の子供? いいや俺は神谷さん家の要君だと茶化そうとして、周りを囲む四人の男達の殺気かと思うほど真剣な視線に言葉を飲み込んだ。 「儀式はまだ終わっておらぬ。男が来るとは思っていなかったが仕方あるまい」  嫌な予感に要は顔をひきつらせた。  これは夢だ。友達に借りた本に似たような小説があったじゃないか。異世界から召喚した神子に世界を救ってもらうとかなんとか。これが夢で、小説通りに進むのならば。 「離せ!」 「そなたには果たすべき使命がある――。我が性を受け、雨を降らせるという大事なものがな……」 「やめろ!」 「暴れるな。我も男は初めてだ。血みどろになりたくなければ大人しくしておくことだ」  逃げようとした要を真っ赤な布の上に押さえつけ、陽王は優しくない忠告をする。背も高く、腕は要の二倍の太さがある陽王が押さえつければ、身動きができずに要の血の気がひいた。 「いや……だ。せめて、誰もいないところで……」  この男から逃げ切れるとは思えなかった。けれど、逃げ出すには人は少ないほうがいい。男は、口の端をあげた。生まれて初めてゾッとした。男が笑ったのだと気付くには、要の知るものと違いすぎた。 「残念ながら、儀式なのだ……」  陽王は、青ざめた要の頬を撫でた。 「やめろ!」 「せめて、気持ちよくしてやろう」 「んぅ、……何を飲ませた!」  酒だと思う。無理矢理口付けで与えられて噎せた。要に出来たことと言えば、爪で陽王の腕をかきむしることくらいだった。陽王は、吐き出そうとする要を抱きしめて言った。 「気持ちよくなる薬だ」 「ドラッグかよ!」  真面目な高校生として暮らしてきた要にとって、その言葉は救いにならなかった。 「んっぐぅ……」 「獣の仔のようだな」  唇に噛みつくことで陽王を拒んだ要に呆れたように、呟く。 「俺はウミウシなんかじゃねーよ!」 「ウミウシ? アメフラシだと言っているだろう。いいだろう、存分に可愛がってやる。夜都(やと)、美海(みうみ)、手伝え」  陽王と同じ服を着た二人を呼ぶ。陽王は、夜都に要の背中を預けた。 「やめ、お前ら強姦だぞ、こんなの! 強制わいせつ罪だ!」 「アメフラシ、大人しくした方が身のためだ。陽王は生意気な娘を従順にするのを好む」  真っ黒な長い髪、青い瞳の男は夜都と言った。周りを囲む五人の男達の中で一番繊細な面立ちをしている。知性を滲ませた声は、陽王と同じように人を従わせることに慣れているようだ。 「人聞きが悪い」  陽王はそう言いながらも、気にした様子はなかった。 「しかも趣味が悪い」  キャンプファイヤーの大きな燃える火の色をした髪は背中まである。施された化粧は女性のように艶やかだった。美海と呼ばれた男は、一見女性のように見えなくもない。けれど見える喉仏や肩の筋肉は要の太ももほどあった。  男達は気安い間柄のようで軽口を叩きながら、要の身体から衣服を剥ぎ取っていった。 「んぅ……」  高校生の間に可愛い女の子とお知り合いになって、何度かデートしてからファーストキスすると決めていたのに、何でこんなごつい男にと思うと涙が零れそうになる。  泣いたのは、要でなく空だった。ポツと小さな雫が要の頬を濡らした。  沸くように観衆から感嘆の声が上がり、『アメフラシ! アメフラシ!』と呪文のようなものが聞こえた。 「二ヶ月ぶりの雨だ――。まだ契約を交わしたわけでもないのに、降り始めるとは期待がもてるな」  儀式に参加していない後ろの二人から、喜びの声が聞こえた。    雨乞いの儀式? 終わりには殺されるんじゃないかと要はおののいた。 「虐めたいわけじゃない、アメフラシ……」 「あっ、やだ……殺さないで――」  耳を濡れた音が塞ぎ、それが夜都だと気付いた。 「アメフラシ、大事なアメフラシを殺すわけありません。可愛いわ」  美海という筋肉にさえ気付かなければ美女に見える男に可愛いと言われながら性器を咥えられて、要は抗う力も抜けた。  殺されるわけじゃないと思うとホッとした。美海の言葉がオネエぽくて気になったけれど。 「薬が効いてきたか……。しっかり解してやれ」 「こんな小さな子供に陽王のそれを挿れるのは……」 「神が遣わしたのだから仕方あるまい」 「ああっ! やだ……咥えながら喋るな……」  要は恐ろしく身体が敏感になっていた。夜都が弄る胸が痺れるように痛い。身体が活け造りのエビのように跳ねる。  動かすこともできないくらいに拘束された下半身からは信じられないくらいの熱を感じて、唇を噛みしめないと声が漏れた。要が声を我慢すれば、涙の代わりに雨の降りが増した。 「可愛い……」 「んっあ……キス、やだ……」  頭を動かしてもすぐに戻され、陽王の執拗な口付けに要は息も出来なくなってきた。 「あ、あ……っ! んんっ、ひ、お……やめ……」  もう睨む事も出来ない。上がる息の合間に懇願した要に陽王は微笑んだ。 「名前を呼ばれただけなのに反応した。さすが神が選んだだけはあるな」  要の手を導き、陽王は自身の一物を握らせた。 「う、そ……」  未知の大きさにゴクリと唾を飲みこむのに合わせたかのように、夜都が胸の突起を弾き、美海が要のものを吸い込んだ。 「あああぁぁぁ――っ!」  激しい鼓動が左の胸を打ち、頭に鈍い痛みがはしる。と、意識が飛びそうな快感に力が抜けて、息が出来ないくらいに呼吸が激しくなった。  要の両脚を後ろから一杯に夜都が広げ、美海が要の出した精液を指に絡め後ろの穴にスルリと潜り込ませた。 「頬が上気したそなたも悪くない」  唇を陽王が舐めただけで、ゾクリとした悪寒のようなものに腰が震えて、要は未知の感覚に泣きそうになる。 「いや……尻になんか……」  あらぬ場所に違和感を感じて要が瞑っていた瞳を開けると、美海の指にひらかれようとする尻が見えた。 「何を!」 「……異世界から来るのは初心なのが多いな」  チラリと陽王が後ろに立つ二人の男に視線を投げたことに要は気付かなかった。 「あっあ……! やっ、やだ」  美海がうまいのか、要に才能があったのか、薬のせいかはわからないが、要の中を美海の三本の指がスムーズに出入りするのにそう時間はかからなかった。 「う、う……んっ――あ、あ、ああっ! そこ、そこ! あ、気持ちい……ぃ」 「そなたは我がアメフラシ。いくらでも快楽を与えてやる」  口付けしながら陽王は要の頬を撫でる。要の意識は半分とんでいて、陽王の 声が耳に入ってはいたけれど訳もわからず頷いた。 「愛らしい」  陽王は退いた美海の代わりに要の脚の間に入り込み、夜都の膝に尻をのせて後ろを支えられた要に口付けた。 「ひ、お?」 「夜都、一気に挿れるからな。しっかり支えてやれ」 「い、れる?」  意味もわからず、後ろを向けば、暗く沈んだ青い瞳が頷いた。  ズッ! と切っ先が小さな孔に潜り込み、力任せに押し込まれた。陽王の向こう側に、雷が煌めいた。  ドドド――ン! と地響きを鳴らして、斜めに雷光が走った。雷の恐怖と自身の痛みに身体を強ばらせ、要は目を見開いた。 「あああぁぁぁ――ぁ!」  美海のお陰で切れもせず、ギッチリと陽王のモノを飲み込んだ要のソコは、一杯まで広がり一部の隙もない。 「あ、痛ぃ……っ、ひお、抜いて……無理……」  夜都から奪うように要を抱き寄せ、陽王は要を太ももに乗せた。自重でさらに銜え込むことになった要は悲鳴を上げる。 「ひお、や……動かないで」  陽王の動きを止めるために、要は抱きつき声を震わせ願った。 「そなたは我に抱きついておればいい」  優しく耳に吹き込むように囁きながら陽王は、要を軽く揺すった。全身を嵐のような風と雨に晒されながら、要は陽王の上で踊らされた。 「あ、お腹、駄目、くるし……ぃ。奥まで、来る……」  細い吐息しか吐き出すことが出来ない要は、それでも陽王にやめて欲しいと懇願した。   「奥がいいのか――?」 「ち……ああっ! あ、あっ……」  小さな律動に要は陽王の背中をかきむしって耐えた。少しだけ遠くなった雷鳴が要の声をかき消す。 「大丈夫だ、そなたは我がアメフラシ。ここも可愛がってやろう」  要が必死に抱きついてくるので、陽王は片手で要の背を支え、間で小さくなった要の性器を指で摩った。 「あんっ、うぅ――」  悲嘆を帯びていた声に熱がこもりはじめたのを感じて、陽王は大きく突き上げる。  背を仰け反らせ、押しつけるように陽王を飲み込む孔が次第に収縮をはじめた。 「やはりそなたは才能がある……」 「やっあ――、ひ、お。陽王!」  全身を土砂降りの雨に叩きつけられながら、要は奥に陽王の熱い飛沫を感じた。 「あ、あっ、あああ――ぁ」  口付けられたまま後ろに倒れ込む要を陽王は愛しげに抱き寄せ、もう一度腰を動かしはじめた。 「陽王、儀式は終わりましたよ」  夜都の声に頷き、陽王は口の端に笑みを浮かべる。 「まだ我は満足しておらぬ」 「うわぁ、可哀想……」 「美海、儀式の完成を宣言しろ」 「了解。陽王、部屋に運んでからやったら? こんな小さな子供、風邪をひくわよ」 「そうだな。もう一度注ぎ込んだら、部屋であっためてやろう」 「鬼畜」    頷いた夜都が声高に宣言する。 「アメフラシは、メリルラシュ国に降臨し、今、陽王様との契約を済ませた」  人々の歓声の中、陽王はもう一度意識のない要の中に精液を流し込み、満足げに身体を離した。飲み込むことが出来なかったものが雨と共に流れるのを見て、またもたげてくる欲に陽王は首を傾げながら、要を抱き上げた。 「アメフラシなど、我が国に雨を降らすだけのものだと思っていたが、しばらくは楽しめそうだ」  陽王の笑い声は意識のない要には届かなかった。
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