プロローグ

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「ありがとうございました」 午前二時。最後の客を見送るとドアにかけているopenの札を裏返す。 札の裏面にはcloseの文字が刻まれている。 それは、ようやく人を相手にする仕事が終わることを告げるようだった。 都内の海辺にあるジャズバー。 ステージ上で奏でられる生演奏だけでなく、マスターお手製の本格的なカクテルまで味わう事ができるのでそれなりに評判だ。 これからこの店に入ることを許されるのは閉めの作業を行うマスターだけだ。 「寒……」 震えながらマスターは思わず言葉をこぼしてしまう。 店の外は雪がちらついていた。
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