3-2.親友と楓葉とリボンの記憶

15/31
前へ
/349ページ
次へ
音が増えて、ミルフィーユのように重なる。 分厚くなったメロディは親友の孤独など、もはや感じさせない。 自分が舞台に居なくても、彼女は孤独じゃない。 あんなに楽しそうに音楽を奏でている。 それでいいじゃないか。 琴の幸せを考えれば。 それでも琴は、あの舞台に一緒に立ちたかった。 自分が、琴を孤独にしたのに、その罪を償いたかった。 琴のいう「みんなで作る音楽」の「みんな」に入りたかった。 『マーチ「ベスト・フレンド」』を奏でる、親友の一員でありたかった。 そんな不純な気持ちで練習していたから、神様は自分を舞台に立たせなかったのかもしれない。 楓のいる舞台裏のように真っ暗でじめっとした心とは裏腹に、舞台上の琴はライトを浴びて笑顔で打楽器を叩き、輝いていた。 ──良い結果が出るといいな。 それでも楓は、このキラキラとした爽やかな友情を歌う演奏に、希望を持っていた。 琴が、孤独を振り払って舞台に立つなら、「親友」として結果を願わずにいられなかった。 しかし、結果と言うものは残酷だった。 銀賞。 前年度と変わらない結果だった。
/349ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加