3-2.親友と楓葉とリボンの記憶

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そして、二人は中学最後のコンクールに挑む。 「今年は、赤なんだね」 ふいに琴が呟いた。 突然色の名前を零したことで、楓は首を傾げた。 「何が?」 「リボン」 琴の手には安全ピンのついた赤いリボンが握られていた。 「リボンの色なんて、気にした事なかった」 「去年は黄色で、一昨年は緑だったよ。楓、つけてくれたじゃない」 一年生の夏。 スタッフとして楓は琴の方にリボンを付けた。 つけた本人なのに、色なんてすっかり忘れていた。 きっと、結果が良くなかったからだろう。 「貸して」 「えっ、おい」 琴は楓のリボンを半ば強引に手に取った。 そして、その赤いリボンを楓の演奏着の左肩に着けた。 「今年は、忘れないようにつけてあげる」 「……結果が良ければ忘れない」 「じゃあ、忘れられない色にしようね」 来年のコンクールで、去年のリボンは赤色だったねと言えるように。
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