3-2.親友と楓葉とリボンの記憶

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次の春。 二人は約束通り高等部に進学した。 桜の木が緑に色づき始めるころ中学の新入生も少しずつ部活に慣れてきた。 ある日、一人の新入生が琴に話しかけた。 楓の事で一つ、聞きたいようだ。 ええとたしかこの子は、トロンボーンの渡部君だ。 最初は少し部活に馴染めてなさそうだったけど、楓が気にかけてくれて。どうやら、それから楓に憧れているらしい。 「楓先輩は、どうしてあんなに頑張れるんですかね」 質問は意外なものだった。 「それをなんで私に?楓に聞いてみたら?」 「聞いたんですけど、誰が教えるか。って言われました」 「あぁ……なるほどね」 宏朋の言葉がそのまま楓の声で再生されそうだった。 それくらいに納得できる対応だった。 「だって、休みもないし、一年生なのに……」 「わからないけど、私のせいかもしれない」 かもしれない。 で誤魔化したけれど、確実に私のせいだ。 宏朋が話している言葉がまるで、呪いのように聞こえて遮った。
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