3-2.親友と楓葉とリボンの記憶

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私のせいで、楓は、私のそばを離れられない。 中学の時から「琴に追いつきたい」と楽器ばかりを演奏して、家の事だって、大変なのに。 全部、全部、全部、私のせいで。 「琴先輩?それ……」 呼びかけられて、ハッとする。 「あぁ、ごめん。けど、渡部君は今の楓に憧れているんでしょう?」 「あ、えぇと、はい……」 「なら、それでいいじゃない。楓が楓のままでいるのなら」 楓が今の楓のままでいるために、私は楓の傍にいる。 それが、楓を変えてしまった、私にできる罪滅ぼしだから。 そうだ、お父さんに頼んでいた『オーバーラン』のアンサンブル版の編曲はまだかなぁ? あれを楓と演奏できたら、一緒に全国大会まで行けたなら、その時は──
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