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3-3.踏切と進む道
琴の半生を一通り聞き終えると、爽介は複雑そうな表情を見せた。
「そんな……事が」
宏朋が言っていた「琴先輩はだれも選ばない」と言う言葉の意味。
なぜ、琴が一人を嫌うのか。
なぜ楓がそこまでして琴に尽くそうとしていたのか。
爽介にとって曖昧だった幼馴染と言う二人の関係性がくっきりと見え始めていた。
「だから、琴は俺が付いてないと……」
孤独に耐えられない琴を救えるのは自分だけだと思っていた。
いや、むしろ、琴を孤独にしてしまい、辛い思いをさせてしまったのは自分のせいだ。
自分が付いて、琴を孤独にしないという罪滅ぼしなのか。
けれどもようやく気付いた。
楓はただただ、琴の傍に居たかった。
それだけだった。
頭を抱える楓の肩に琴の母の手がポンと置かれる。
「大丈夫よ。楓ちゃん」
楓が顔を上げると琴の母は微笑みかけていた。
「琴には私が付いているから。ね?」
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