3-3.踏切と進む道

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「何だ」 「あ、えぇと。俺、家、反対方向で……」 爽介の家は線路の向こう側、駅の近くだった。 「どの道でも付いて行くくんじゃなかったのかよ」 「うっ……じゃあ、送ります……」 ため息と共に痛いところを突かれて、爽介は楓を家まで送らざるを得なかった。 反対方向でも、遠くても、この人を一人にするわけにはいかない。 一人になりたくない。 それは爽介自身も琴を失い悲しみに暮れていたから。 楓まで失うわけにいかない。 お互いに同じ傷を共有する者として。 それからしばらく無言のまま、暗闇のアスファルトの上を二人で歩く。 沈黙にどこか気まずさと、夜空にかかる真黒な雲のような不安を感じた。 耐えきれず、爽介は「楓先輩」と呼びかける。 「一応聴きますけど、どうして、あんなカマかけたんですか」 あんな「事」でも、あんな「真似」でもなく、あんな「カマ」だ。 死ぬ気がなかったのに、線路に立つような事をした。 命を懸けてカマをかける。 恐ろしい事だ。 なぜそこまでの事をしたのか理由が知りたかった。 「……それ」 楓は、爽介の鞄から少しだけ頭を出したスティックケースを指さす。 「ん?あぁ……このスティック」 「お前が琴から俺の事を任されたって聞いて、本当にその気があるのか確かめたかったんだよ」 なるほど。 それにしては少しやりすぎではないだろうか。
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