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4-1.一番かっこの行方
「それで、これからどうする?」
琴の事故から一週間。
十一月の半ばになり、アンサンブルコンテストのエントリーをいよいよしなければならなくなった。
アンサンブルメンバーたちは部室で八人、円を作るように座りこみ、ミーティングをしていた。
「あまり考えたくないけど、琴先輩が出場できない場合……このアンサンブルをどうするか。」
音羽がこのミーティングの議題を端的にまとめた。
議題が議題だけに、他のメンバーは暗い表情を見せて俯き気味になる。
どうするか?という曖昧な問いかけだったが答えは「出場する」か「欠場する」のどちらかだ。
しばし沈黙が続くと、音羽はため息をついた。
すると、「はい」と言う声と共に一本の手が高々と挙げられた。
声の主は野乃華だった。
「野乃華?」
「私は、出たいです!国立大学よりもいい演奏がしたいから。」
野乃華には立派な目標があった。
恋人である小早川に自分の音を聴かせたかった。
欠場となればその目標も達成はおろか挑戦すらせずに儚く消える。
「俺も、せっかく誘ってもらって、ここまで練習してきたし……。」
「…分かった。皆出場したいってことでいいのね。」
「はい。」
メンバーたちは音羽の問いかけに同意する。
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