71人が本棚に入れています
本棚に追加
/349ページ
そんな様子に痺れを切らした楓が、「貸せ」とスコアをめくり、指を指した。
「一番かっこ。ここを無くせばいいだろう。」
指された場所は終盤の繰り返しにあたるところだった。
確かに、この部分をカットしてしまえば十秒どころか余裕を持って演奏できるだろう。
しかし、メンバーたちは難しい顔をしていた。
楓の示した一番かっこにはsolo ad libと書かれていた。
クラリネットの部分に。
爽介でもそれは分かった。
「でも、そこは……」
「俺はかまわない。こうするしかないだろう。」
「そりゃ、そうですけど……」
思わず、反対してしまった。
しかし、それ以外どうする?代替案など用意していない。
そうなると何も言えなかった。
結局、そのままsolo adlibと書かれた一番かっこはカットになった。
最初のコメントを投稿しよう!