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カットになった一番かっこ。
最初八小節はクラリネットのアドリブ。
そこからドラムが入って、八小節間伴奏をする。
計十六小節のカット。
二番かっこは曲のクライマックスへの繋ぎもあるからカットできない。
分かっている。
仕方がない。
「あーあ、楓先輩のソロ見せ場だったのにな。」
宏朋の声に爽介ははっと我に返る。
ミーティング後に合わせをしてその日のサークルは終了した。
いつもの一年生男子三人で帰ろうと防寒具に身を包み駐輪場へ向かった。
もう冬場。帰り道、宏朋が白いため息を吐く。
「残念だけど仕方ないよ。あそこ以外を削るのは無理だ。」
「まぁ、楓先輩最初にもソロあるけどさー。……おい、爽介?」
「……え?あ、ごめん。」
「どうしたんだい?ぼーっとしてるなんて珍しい。」
いつもと様子が違う爽介に、また風邪でもひいたのではないかと佳貴が心配した。
「いや、なんでもねぇよ。」
「そう?」
なんでもない。
けど。
本当にこれでよかったのか?
爽介の頭の中では今日のミーティングで決まった事に不安がぐるぐると渦巻いていた。
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