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それから一週間。
爽介は渡された楽譜を大急ぎでさらった。
音を並べる上ではどちらかと言えばドラムのパートの方が難しい。
それは楓に渡された楽譜を見た時から分かっていた。
ところが、いざさらってみると、ビブラフォンのパートは、表現がはるかに難しい。
「このままで、今日の合わせ、大丈夫かな……」
爽介の中の不安は膨らむばかりだった。
午後になり、合わせが始まる。
七人になって初めての合わせだ。
しかし、練習のメニューはいつも通り。
冒頭からきめ細かく確認をしていく。
曲の冒頭から爽介はマレットを構えてビブラフォンを奏でた。
が、すぐに楓の手が挙がる。
「ストップ。星見、リズムずれている。」
「え……あぁすみません。」
冒頭のゆっくりした部分だからこそ、ズレると目立つ。
しかも、ここは楓との二重奏になる部分だ。
ミスは許されない。
「星見、そこ走ってる。」
「あ、すみません。」
『正確に』という意識が焦りに代わり今度はテンポが走ってしまった。
もう一度、今度は焦らず、落ち着いて。
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