4-1.一番かっこの行方

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それから一週間。 爽介は渡された楽譜を大急ぎでさらった。 音を並べる上ではどちらかと言えばドラムのパートの方が難しい。 それは楓に渡された楽譜を見た時から分かっていた。 ところが、いざさらってみると、ビブラフォンのパートは、表現がはるかに難しい。 「このままで、今日の合わせ、大丈夫かな……」 爽介の中の不安は膨らむばかりだった。 午後になり、合わせが始まる。 七人になって初めての合わせだ。 しかし、練習のメニューはいつも通り。 冒頭からきめ細かく確認をしていく。 曲の冒頭から爽介はマレットを構えてビブラフォンを奏でた。 が、すぐに楓の手が挙がる。 「ストップ。星見、リズムずれている。」 「え……あぁすみません。」 冒頭のゆっくりした部分だからこそ、ズレると目立つ。 しかも、ここは楓との二重奏になる部分だ。 ミスは許されない。 「星見、そこ走ってる。」 「あ、すみません。」 『正確に』という意識が焦りに代わり今度はテンポが走ってしまった。 もう一度、今度は焦らず、落ち着いて。
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