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「まぁ、仕方ねーよ。コンバートって大変だもんな。分かるよ。」
「メガネ先輩⁉……何が分かるっていうんですか。」
昇流の「分かる」と言う言葉に少しだけムッとする。
自分で選んだとはいえ、本番までの残り時間も少ない中で急に演奏する楽器が増えたんだ。
その辛さがどうして他人に分かると言うんだろう。
「分かるよ。」
もう一度、かみしめる様に昇流は言う。
「俺も、もともとチューバ吹きじゃなかったし。」
「そう……なんですか?」
「あぁ、昇流は高校ではトロンボーンやっていたのよ。けど、私たちの代はトロンボーン多くてね。」
「それで、楽器を持っていない俺が、チューバをやったってわけ。」
その年のトロンボーン希望者は昇流を含めて4人。昇流以外の同級生のトロンボーン希望者は全員自分の楽器を持っていた。
それよりも人数の少ないチューバへ人員を補強したいという事でチューバへのコンバートとなった。
爽介はもとより、佳貴もそこまでは知らなかったようで口をはさむ。
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