4-1.一番かっこの行方

12/22

71人が本棚に入れています
本棚に追加
/349ページ
「それもあるけど、それよりも精神面の方がな……。」  トロンボーンからチューバへのコンバートとなると、運指やマウスピースの大きさが違う。 それを大学で一から覚えなおすとなるとなかなかの困難だった。 しかし、それよりも何よりも、昇流はメンタルをすり減らしていた。 「他の同級生はトロンボーン吹いていて、吹けていて。俺は一からチューバ吹いていて」 チューバという楽器が嫌いではなかった。 それでも、コンバートしなければ経験者としてトロンボーンを吹いていられた。 吹奏楽経験はあれど、チューバ初心者という立場に立ったこと。 経験者として入部したはずだったのに。 トロンボーン希望者さえ少なければ、楽器さえ、あれば。 「そうだったんですか……」 「でも、今はこれでよかったと思っている。」 昇流は先ほどまでの表情とは打って変わって笑顔を見せた。
/349ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加