4-1.一番かっこの行方

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「俺たちのの一つ上の先輩にすげぇ上手いサックス吹きが居たんだよ。由奈先輩って言うんだけどさ。」 昇流曰く、由奈はアルトサックスを吹いていた。 音羽たちが入学した時にはすでにファーストアルトサックスの首席を任されていた。 当時、アルトサックスが少ないのもあるが、二年生でトップ奏者を務めるなりの実力はあった。 「由奈先輩がファーストで私がセカンド。去年は基本的にそれでやってきたの。」 「へぇ」 「まぁ、とんでもない人でね。無茶苦茶な演奏するの。」 無茶苦茶。 由奈の演奏は型破りだった。 音程やリズムを少しずつずらしたりすることなど、ざらだった。 「えぇ……それって上手なんですか?」 「無茶苦茶だけど、表現力は誰よりもあったの。」 正確さこそなくとも、由奈は表現をするために若干不正確な箇所が出るタイプの奏者だった。
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