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「結局精神論みたいになっちゃうけど。結構重要なのよ。信頼関係って。」
少しばかり誇らしげに笑う。
信頼。
それはきっと音羽からのものだけでなく、由奈からの信頼もあってこそのものだったのだろう。
由奈がそのようなことを口にしたことは一度もなかった。
それでも音羽には分かっていた。
信頼し合えないとできない演奏をしてきたからだ。
「音羽、最初のうちはあんな滅茶苦茶な演奏にどうやったら合わせれれるの……って頭抱えてたもんな。」
「ちょっと!それ言わないでよ!」
突然同級生に舞台裏を明かされて、慌てて声を荒げた。
冷静を取り戻そうと、音羽は咳ばらいをする。
「まぁ、とにかく。信頼が大切って事!学祭のシング・シング・シングだって楓先輩のこと信じていたからできた事でしょ?」
「あっ……そうか!」
ゲネプロで楓の事を信じられなくなって崩壊した演奏。
その後の本番で持ち直すことが出来たのは楓の「お前に合わせる」と言う言葉を信じたからだ。
結果、楓も爽介の演奏を信じて、お互いに最高のものを作り出すことができた。
「大丈夫。だな!」
後輩が発した希望の言葉に先輩たちは笑顔になった。
「さ、そろそろ時間も遅いし、帰ろうか。」
気付けば時間は二十一時に差し掛かろうとしていた。
次の日も全員講義がある。適当なタイミングでお開きになった。
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