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4-2.風使いを救う魔法
土曜日の午前。
まだ誰も来ていない部室で爽介は慣れないビブラフォンの前で頭を抱えていた。
あれから一週間。
ひたすら録音を聴いて、練習した。
求められる音のニュアンスに合わせてマレットを何度も持ち替える。
木管群の静かなソロパートの伴奏であったりカウンターメロディーをするので、連携も重要だ。
それでも、爽介には「今度は自分が楓に合わせる」という目標があった。
学祭の時に助けてもらった分を、今度は自分が琴の代わりになって楓を支える。
その思いがあったから、慣れないビブラフォンを何度も叩いた。
「……録音、もう一回聴いてみるか。」
そう言ってスマホに刺さったイヤフォンを耳に装着した。
重要なのは曲の冒頭。
フルートと、クラリネットのソロの部分だ。
フルートの伴奏はいい。
ここは伴奏だ。
楽譜通り叩けば佳貴が気持ちよく吹いてくれる。
問題はその後のクラリネットソロ。
ここはカウンターメロディ。
楓との連携が肝になってくる。
録音の中でしか聴けない楓と琴の二重奏は一糸乱れぬ連携で流石としか言えなかった。
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