4-2.風使いを救う魔法

9/27

71人が本棚に入れています
本棚に追加
/349ページ
思わず、病室に入り、爽介は声をかけた。 楓も「星見?」と言い、涙で染まった目をぱちくりとする。 「なんで……ここに」 「部室出た時から、後を付けてたんです」 全く気付かなかった。無心で病院までの道を歩いていたから。 「……聴いてたのか?」 「えぇ、最初からね」 先ほどまでの楓の弱音を、鳴き声を、爽介は全て聞いていた。 居心地の悪い楓は、まだ涙で濡れている目を細めた。 「……説教をするつもりなら出て行け」 「別に。そんな事、しませんよ。ただ……」 「ただ、何だ」 「一度でいいから二人で、もう一度合わせをしましょう」 「合わせ?」 爽介から出されたのは意外な提案だった。 「そうです。楓先輩が俺の事信じられるように、合わせたいんです」 一度、共に奏でる事で確かめたい。言葉ではなく、音楽で。 楓が爽介を信じられるかを。 「どのみち、明後日もコソ練するんでしょ?」 全てお見通しだという目で爽介は楓を見た。 楓も珍しく、素直に首を縦に振った。 「……分かった」
/349ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加