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二人の見える位置にねじを巻いたメトロノームを置く。
振り子がゆっくりと揺れると一定のテンポでリズムを刻む。
「どこやるか、分かってるな。」
「えぇ。お先にどうぞ。」
カウントはしなくても大丈夫。
楓が先に入ったところを、爽介のビブラフォンがカウンターメロディを奏でる。
合わせる場所は、お互いに分かっていた。
すぅっとブレスを取る音は、静かな準備室に響く。
その後、奏でられたのは楓の音だった。
今まで通り、いや、今までよりも迷いの混じった音だった。
すぐに爽介が追いかける様にカウンターメロディを奏でる。
楓に言われた「好きに叩け」の言葉通り、好きに叩く。
だって、それが楓の望みなのだから。
しかし、二つの振動は空気の中で混ざることなく、空中で分離したままだった。
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