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折れにくいのが良いんじゃないか?と楓に言われたにも関わらず、琴が選んだのは軽い材質のスティックだった。
わざわざ折れやすいものを選定したのは、それが、メイプル……楓を意味するものだったから。
「……気づいていたのか。」
「一応、英語科ですから。」
そう言って、爽介はようやく笑った。
「琴先輩は、楓先輩を任せる意味で、このスティックを選んだんだって。そう思ったんです。絶対にそうだって。」
言い聞かせるような、覚悟のような言葉が響く。
「琴先輩の目が覚めた時、楓先輩がこのままじゃ、顔向けられないんです。だから。」
楓を変える。そのために。
「俺に、任せてください。」
混じりけの無いまっすぐな声がした。
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