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楓は何も言わずに楽器を構えて空気を名一杯吸う。
瞳で合図をだけ出して、一足先に音楽の列車に乗る。
爽介もその合図に気づき、すぐにマレットを構えて、鍵盤を叩く。
琴を失って隣にいたのは、琴とは真逆の魔法使い。
曰く「俺に合わせろ」と。
「今までの演奏は忘れろ」と。
自分が言った事をそのまま返されて。
困惑する。
状況が違うのに。
できるものか、今までの演奏を忘れるなんて。
それでも、今、隣にいるのは彼しかいない。
音楽と、添い遂げるために、手を差し伸べてくれるなら。
それしかないのなら。
苦労するとしても。
その手を取るしかないのだ。
二人を乗せた列車が走り出す音がした。
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