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魔法使い。
そう言えば兼村先生が言っていたな、楓が合奏中に「俺は、魔法使いになれない。」と言って楽譜を投げた事。
それに通じるのだろうか?
ひたすら考える爽介に対して、楓はすべてを話した。
「俺が高校三の時に東京に、都大会を聴きに行ったんだ。中学の部だったよ。バンド自体はそこまで上手じゃなかった、粗が多かった。それでも、その粗をカバーしてバンドを導く魔法みたいな演奏があったんだ。」
「へぇ、そんな人が……。」
「曲はスク―ティン・オン・ハードロックだった。その魔法使いは、ドラムを叩いていたよ。」
そう言いながら楓は鞄からCDを出す。
楓が四年前から何度も聴いたであろうCD。
爽介にも見覚えがあるものだった。
そこに書かれていたアーティスト名、学校名は爽介の母校のものだった。
楓の言う、魔法使い。
曲名も年度も土地も、そして担当パートもすべて爽介に通じるものだった。
「……もしかして。」
「そうだ。魔法使いはお前だよ。星見。」
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