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渡された楽譜には、楓との二重奏、カウンターメロディの部分に「solo」と書いてあった。
「ソロ……?これって」
「お前がソロで俺が裏メロだ。」
「俺が、ソロ?」
楽譜上ではクラリネットがソロで、ビブラフォンはカウンターメロディだ。
爽介は言われた言葉の意図が分からなかった。
「お前は琴とは違う。今までの演奏とは全然違うもので俺も混乱した。」
琴ならば、絶対に楓に合わせる演奏をする。
一糸乱れぬ二重奏。
爽介が初めに目指したものだ。
しかし、楓はそれを拒んだ。
「けど、お前は人を先導する演奏なら誰よりも上手い。」
爽介には、爽介らしく演奏してほしい。
「星見。」と名前を呼ばれる。
爽介は楓の顔を見た。
視線を向けた先の氷の瞳は熱かった。
氷なのに、融けだしてしまいそうなくらい熱がこもったまっすぐな瞳だった。
「お前となら、俺はさっきの演奏がしたい。」
「……だから、この楽譜を書き換えたんですか?」
「そうだ。」
爽介の魔法を誰よりも信じているから。
「お前の魔法で俺の事を導いてくれ。」
瞳と同じくらいに熱い言葉、いつもの命令口調ではなく、願うような声。
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