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4-3.オーバーラン
アンサンブルコンテストの当日、朝早くから管打楽器7重奏のメンバーは会場入りした。
楽器の積み下ろしや、集合時間まではまだ時間がある。爽介は佳貴、宏朋と談笑していた。
「宏朋、お前すごい隈だな」
「うわ、本当。みてるだけで眠そう」
「……眠そうじゃなくて眠いんだよ」
宏朋の眼の下には真黒な隈、明らかに眠たそうな表情であった。
冗談交じりに佳貴がその理由を挙げてみる。
「緊張して眠れなかったとか?」
「……」
宏朋は無言で頷いた。
「マジかよ…」
「そんな人って本当にいるんだ」
中学生や高校生ならまだしも、大学生にもなってそのようなことがあるとは、と二人は驚く。
「だって今日までやってきて、本番ってなったら緊張もするだろ?」
「いや、流石に眠れないはない」
「うん、ない」
宏朋の問いかけに二人は、きっぱり断言する。
その表情はちょっと引き気味な真顔だった。
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