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「…お前ら」
完全否定された 宏朋は頭を抱える。
「まぁ、それだけお前が真剣にやってるってことだろ」
宏朋は楓に誘われたから今日のステージに乗ることを決めた。
高校時代から憧れてきた先輩と最後に全国に行きたい。
それだけのことでここまでやってきた。
このアンサンブルを通して粗削りだった演奏技術も少しずつ精密なものへと変わっていっている。
「むしろ、それがきっかけでここまでできるってすげえよ」
「そ、そうか?」
突然褒められると照れる。
少しくすぐったい気持ちになり、「そういえば」と話題を変えようとした。
「野乃華はどこ行った?」
「あれ?さっきまで近くに居たんだけど」
「はぐれたとか?」
「まさか」
ホールとは言え、会場はそれほど広くない。先ほどまで一緒に入場したのに、少し談笑していた内に一人、ふらりとはぐれることなど。
「……心配だから、一応探そう」
「…だな」
野乃華の事だから、無いとは言い切れなかった。
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