4-3.オーバーラン

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「プログラム二番、美和大学吹奏楽サークル管打七重奏。北長瀬明作曲『オーバーラン』」 自分たちの演奏順、団体名、曲目がアナウンスされる。 徐々に光量を上げる照明がステージに居る七人を照らし出す。 あぁ、いよいよ始まるんだ。 七人の、いや、八人の電車の旅が。 ステージに立つのは七人だけど、琴も連れて言ってしまえるような、そんな演奏がしたい。 と爽介は意気込む。 佳貴のフルートが一度斜めに下がり、上がり、旗のように合図を出す。 冒頭はフルートソロだ。 ビブラフォンは伴奏をする。汽笛のような音を交えながら精一杯汽車の出発を表現する。 それに和音を重ねるようにクラリネットが入ってくる。 最初の乗客、いや、この列車の車掌のようだ。 何度も練習を重ねた二重奏。 いつも通り、ビブラフォンのソロ、クラリネットのカウンターメロディ。 二人だけの独特の解釈は会場を魅了した。
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