4-3.オーバーラン

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冒頭部分が終わると、爽介はマレットをスティックに持ち替える。 全員が揃って、いよいよ汽車は出発する。 アップテンポのメロディはジャズのような雰囲気を纏っている。 アルトサックス、トロンボーン、トランペット、それぞれが、ソロを奏でていく。 それを支えるのはチューバとドラムの伴奏だった。 順調に汽車の旅は続いていた。 いや、完璧だった。 曲はいよいよ、クライマックスへと向かう。 一番かっこを飛ばして、二番かっこに入る前に、爽介がもう一度ビブラフォンからドラムへと移動しようとした時だった。 足が、かくん、と曲がる。体重が空間に投げ出されるような感覚がした。 爽介の視界に、みるみると床が近づいていく。 え?と思った時にはもう遅かった。 ばたりと音を立てて、爽介の体は舞台に叩きつけられた。 何が起こったか一瞬、わからなかった。 演奏を続ける全員も同じで、顔が青ざめる。
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