4-3.オーバーラン

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しかし、一番最初に、冷静になったのは、楓だった。 『全員吹くな。』という視線を、楓は全員に送る。 それが何を意味するか。 ──一番かっこ、入るぞ。 混乱の列車の行先は、カットされたはずの一番かっこ。 楓のソロアドリブが奏でられた。 楓のソロの間に、爽介は起き上がり、ドラムセットへと向かい、もう一度琴のくれた、メイプルの、楓の木でできたスティックをぎゅっと一度、握りしめた。 奏でられた二重奏は、冒頭の大人しさとは打って変わっていた。 何かを思い出した気がした。 あぁ、この感じ。 学祭の時と同じだ。 脱線寸前の列車は、楓の手によってなんとか救われた。 ただ、タイムオーバーと言う可能性だけが不安だった。
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