4-3.オーバーラン

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うっすらと空が夜の色になりかけた頃。 爽介たちは再びホールの中に入った。 結果発表の時間だ。 大学の部に出場している団体数は片手で数えられるほど少なかった。 そのため、結果発表は一般の部と共に行われる。 ブザーが鳴ると、ステージの幕が上がる。 ステージの上にはこれから賞状を受け取る各団体の代表者が並んでいた。 そこには楓の姿もあった。 「プログラム一番、国立大学打楽器六重奏……ゴールド金賞」 最初の団体の賞の色と拍手の音がホールに響く。 夏に全国大会のステージに立った国立大学の学生だけある。 県大会金賞くらいでは大きな歓声が上がることも無い。 最初の団体だからか、賞状の内容を読まれている。 美和大学の結果はこの後だ。 「プログラム二番、美和大学吹奏楽サークル管打七重奏……」 団体名と結果の間に少しだけ間が開く。 とにかく祈った。 大丈夫。 きっと、賞の色が呼ばれるはずだ。 その色は、きっと、絶対に── 「タイムオーバー」 無情にも、管打八重奏に与えられた賞に色は無かった。 五分には収まらなかった。 少しだけ過ぎてしまった時間によって、彼等の冬は終わった。
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