4-3.オーバーラン

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自分たちがタイムオーバーだった。 そこから先は何も覚えていない、聴こえなかった。全ての結果発表が終わった後、全員はホールを出た。 ロビーでは他団体の歓喜の声が聞こえていた。 「すみませんでした」 爽介は、開口一番頭を下げて謝る。 「仕方ないって。」 最初に、口を開けたのは佳貴だった。 「けど、俺が転ばなければ……タイムオーバーには……」 「ならなかったかもしれないけど、なっちゃったものは仕方ないでしょ」 「……」 音羽の竹を割るような言葉に、爽介は黙り込む。 空気が重くなる。 そんな雰囲気をなんとかしようと、昇流が爽介背中を思い切り叩く。 あまりのパワーに、つい呻き声を出してしまった。 ひりひりとする背中をさすっていると、「爽介君。」と呼びかけられる。 野乃華だ。 「島村さん……」 「あのね、私。どうしても国立大学に……小早川君に勝ちたかった。全国大会行きたかったの」 真剣な眼差しで野乃華は爽介に言い放った。 「本当にごめ……」 爽介は青ざめて、もう一度深く頭を下げようとする。 しかし、その言葉は「でもね」という、彼女自身の言葉で遮られる。
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