4-3.オーバーラン

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何処へ行ったのだろうか。 爽介は楓の行方を捜していた。 ロビーから少し離れた、ホールの入り口の近くまで探しに来た時だった。 「……ありがとうございます」 聞き覚えのある落ち着いた声がする。 すぐに「楓先輩!」と声をかけようとした。 しかし、やめた。 楓は誰かと話している。相手は、五十代くらいのおじさんだろうか。 何を、誰と話しているかは気になった。 ふと振り返った楓と視線が合う。気づかれた。 すると、楓は手招きをする。どういう事だろう。 素直に、そちらの方へ向かうしかない。 「あの……楓先輩、こちらの人は……」 「この曲の作曲者の先生だ」 と言って見せたのは今日演奏した『オーバーラン』。 この曲の作曲者、という事は、目の前にいるこのおじさんは。 「どうも、北長瀬明といいます」 「琴先輩の……お父さん⁉」
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