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楽譜の横に書いてある名前の人物は琴の父だ。
明は驚く爽介に手を差し伸べた。
爽介もその手を取り、握手をする。
「私の曲を演奏してくれてありがとう」
礼を言われた。
作曲者直々に感謝されるなんて。
正直、複雑だ。
もしも、金賞で、代表だったのならば素直に喜ぶ事が出来た。
けれども違う。
それも、タイムオーバーという賞の色もない形でこの曲を終えてしまったんだ。
爽介は手をほどき、頭を下げた。
「……すみませんでした」
「何を言ってるんだい?私は礼を言ってるんだよ?」
「だからこそ、全国行けなくて申し訳ないなって……」
しかも、自分のせいで。
礼を言われる筋合いなんて、自分にはない。
爽介は俯いて、ぎゅっと唇を噛む。
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