4-3.オーバーラン

19/43
前へ
/349ページ
次へ
琴を引き留めて隣に居た幼馴染の男の子に、少しの嫉妬をしたのだった。 今度は楓が罪悪感で俯いた。 その様子を見た明は慌ててフォローをする。 「あ!そんな深刻にならないで。ちょっと意地悪してやろうくらいの気持ちだよ。どちらかと言うと二人がどうするか気になった。そっちの好奇心の方が強かった」 「だからこの曲でアンサンブルコンテストに出るならこの部分をカットせざるを得ないようにした……」 「正直、大人気ない事をしたなって思ったよ」 ごめんね。と意味を込めて一瞬微笑むと、「けど、予想は外れた」と言い、明の表情は暗いものになった。 「琴はステージに立たなかった……立てなかった」 琴の事故。これが全てを狂わせた。 「オーバーラン」を演奏したいと言っていた娘は、ステージに立つことなく、今も病室のベッドで眠っている。 「そして、君たちはあの部分を演奏した。せざるを得なかったんだろうけどね」 「北長瀬さん……」
/349ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加