4-3.オーバーラン

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楓曰く、琴の技術では十分にドラムとビブラフォンの両方の楽譜をこなすことは可能であるという。 二十年以上隣に居て、十年近く共に音楽をしてきた仲間だ。それくらい見抜いていた。 諦めたと聞いた、大変だと聞いていた爽介は驚く事しかできない。 だって、できたのならどうして。 「琴先輩、なんでやらなかったんですか?」 「お前が現れたからだろ」 「俺が?」 「お前が、俺を導ける。いや、導いてほしい。そう思っていたんだろう」 それ故、爽介をアンサンブルのメンバーにするために、パーカッションを二人体制にわざとした。 すべては楓のためだった。 ずっと前線にいた楓を、導いてくれる人が居るのならと。 「俺……お前に導かれるのも悪くないかなって思った」 「……へ?」 突然、話の主人公が琴から爽介に移ったことに当の本人は間抜けな声を漏らし、目を丸くした。
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