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美和町まであと一駅だった。
楓がふと、「そうだ」と何かを思い出す。
「これ、使えよ」
そう言って差し出されたのは、楓が首に巻いていたマフラーだった。
「え?なんで……?」
真冬とはいえ電車内は特に寒くもない。
このタイミングで楓が防寒具を差し出した事が爽介には理解不能であった。
爽介のきょとんとした表情を見て、楓は少しだけ微笑む。
「ずっと、我慢してたんだろ?泣くの」
「なんで、それを……」
「さっきから変な笑顔が多いんだよ。お前、辛いときに笑う癖あるからな」
どんなに笑顔を取り繕っても、それが、爽介の辛い時のサインだと、楓は気づいていた。
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