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悔しかった。悲しかった。
三ヶ月、創ってきた音楽が、冬が終わった事。
もう、無理して笑うことも無い。
爽介の表情はみるみる哀しみに変わり、
瞳からは、ぼろぼろと涙が溢れ出して止まらない。
「俺…悔しいって気持ちより…悲しいって気持ちが大きいんです」
「悲しい?」
楓は、爽介が「自分のせいで賞を獲れなくて悔しい」から泣いたのかと思っていた。
しかし、彼から出てきた言葉は「悲しい」だった。
「もう、楓先輩と、みんなと、一緒に演奏できないって、それが何よりも悲しくて」
楓の冬が終わったことは彼の大学でのサークル生活にピリオドを打つという事になる。
もう二度と、このメンバーで演奏をすることは無い。
爽介にとってはそれが何よりも悲しかった。
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