4-3.オーバーラン

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「だから、もっともっと一緒に演奏したかった。全国まで行ければ三月まで一緒に居られたのに」 せっかく、自分の事を認めて背中を預けてくれる楓と、このサークルでもう演奏する事はない。 ただただ、一日でも長く、共に演奏したかった。隣に座っている風使いと、ホールに魔法をかけたかった。 それだけ、ただ、それだけが悔しかった。 全国大会に行く事が出来れば、もっと長く演奏できたのに。 「俺のせいで、もう演奏できない」 爽介はマフラーに顔を埋めて泣きじゃくる。 そんな爽介の頭を二度ほど軽く叩き、「じゃあ……」と呟いた。 「俺のこと『先輩』って言うのはもうやめろ」 「え……」
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